狩野養信「探幽写兼好法師像」

狩野養信「探幽写兼好法師像」

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商品番号
商品名 「探幽写兼好法師像」
全体サイズ
本紙サイズ
作者 狩野養信
制作年代 1819-1846
価格 ¥500,000

肘を掛けた老人の肖像。落款からこの人物が、江戸狩野を代表する絵師・狩野探幽の描いた兼好法師を模写したものであるということが分かります。描いたのは同じく江戸で活躍した狩野養信。模写した兼好法師像はおそらく金沢文庫が所蔵している「兼好法師像」でしょう。
両者をまず顔貌表現から比較すると、頭巾の形状や額に三本の線を描く点や、眉尻に向かって毛深くなる点、そしてへの字に曲がった口元など、とてもよく似ています。しかし元の探幽筆の兼好法師が鼻の縦がなだらかな線で描かれるのに対し、やや鷲鼻ぎみに描かれるという相違点も見られ、養信の独自性も窺わせます。着衣を見てみると、探幽の着衣は皺の線に沿って隈で立体感を表現するのに倣い、養信も皺を濃い墨でほどこします。両者の着衣の皺の位置も見事に一致しています。左肘を脇息にかけ、胡坐をかき、書見代(しょけんだい)に何やら書を置き、一心に読んでいる構図も同じであり、養信が原図をよく観察し、再現しようとしていたことが見えてきます。
画面上には和歌が記されています。

世の中を渡り比べて今ぞしる
阿波の鳴門の波風もなし
(作者未詳)

こちらは古くから知られる和歌であり、「世の中を渡ることの難しさに比べたら阿波の鳴門の海はなんと波風のなく穏やかなことだろうか、と今になって知ったことだ」という意味の歌です。この和歌は非常に有名で兼好法師も自身の私家集のなかに引用しています。また「徒然草絵抄」の冒頭部分には、本作のように足を崩し書物を広げた兼好法師の図があり、その頁にはこの歌が書かれています。リラックスした姿勢の兼好法師と「世の中を…」の歌の組み合わせは脈々と養信の時代まで受け継がれ、本作を制作するうえでヒントになったのかもしれません。

狩野養信(1796-1846)は、木挽町狩野家9代名であり、會心斎と号しました。
1819年(文政2年)に法眼の称号を得ており、その後1834年(天保5)に法印に叙せられていることから、本作は1819年から1834年の間に制作されたということが判明しています。
江戸城西の丸や本丸の障壁画を手掛けたことで知られており、また多くの古画の模写を行いました。本作も熱心な模写の一つに類するものと考えられます。


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