森狙仙「猿図」
森狙仙「猿図」
背を丸め、ぽつんと一匹座り込んでいる子猿。じっと手元を見つめる仕草には愛くるしさがあります。
全身の毛は一本一本細い線を無数に重ねることで、子猿特有のモフモフとした柔らかそうな質感に仕上げています。お尻の小さなしっぽもふわっとしていて、非常に可愛らしいものです。画家の細部までしっかりと捉える観察力と再現力の高さには舌を巻きます。表情に注目すると、顔立ちから目元や口元によった皺の陰影のつけ方にいたるまで、本物そっくりとしか言いようがないほどです。目線を下に向け、口をぎゅっと引き結んでいる表情は、どことなく拗ねているようにも見え、まるで人間の子どものようです。
左手に注目して見ると、どうやら手の中に何かを持っている様子。木の実でしょうか。食べ方が分からずにじっと考え込んでいるのか、それともここにはいない親猿の迎えを一人寂しく待っているのか…
猿描きの名手・森狙仙の猿たちには、一匹一匹に物語があり、見る者を絵の中に引きこみます。
本作は、精妙な動物の絵で知られている、森狙仙(1747?~1821)の作品です。大阪歴史博物館 にて開催されていた「猿描き狙仙三兄弟」展など、近年数多くの展覧会に出品され、現在非常に人気があります。本作の落款は晩年の「狙仙」ではなく「祖仙」であることから、改名前1806年(文化3年)以前のものと考えられます。
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