作者不詳「武蔵野図屏風」
作者不詳「武蔵野図屏風」
「武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて草にこそ入れ」
一面に草叢が広がる武蔵野台地(東京都〜埼玉県南部にまたがる平野部)の風景を詠んだこの歌は、万葉集に由来する古歌として江戸時代に流行しました。
このように、古来より歌枕として愛好されてきた武蔵野ですが、江戸時代に入ると、とりわけ屏風絵の主題として人気を博しました。本屏風の制作時期は慶長〜寛永頃(17世紀初頭)とみられ、構図が類型化する以前の武蔵野図として貴重な作例です。
芒に野菊、桔梗、萩……生い茂る秋草の間を、大きな月が沈んでゆきます。自然に配置された草花のリズムが心地よく、写実と装飾のバランスが巧みに取られています。風情溢れる武蔵野を繊細に描いたこの屏風の前で耳を澄ましたならば、芒を撫でる風の音や、密やかな虫の声が聴こえてきそうです。
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